ハコムス、消耗品からの脱却

僕らはなにに対しても毎度毎度 "良い" "悪い" で評価を下したがります。それはある種、自分だけの「生きる為の上手な選択マニュアル」に則って、と言えます。しかし、光と影的に、マニュアルがあればその例外もあり、よって僕たちは固定された枠の中で常に柔軟でなくてはなりません。マニュアルは中身が固定された時点で、その意味を成さなくなるのです。

普段僕たちは、無意識のうちに物事を良し悪しで判別してますが、大切なのは、欲しいか欲しくないか、なんです。事実、 "良くも悪くもない" だとなんだか宙ぶらりんで心地悪いしなあ、なんて思ったりして、別に欲しくはないものという意味で、それがどちらかと言うと "悪い" であることに気づかないことが多々あります。つまるところ、自分にとっての欲しい欲しくないの理由を語るというだけのことですから、いくら偉そうに語ろうが、また謙虚さのある厚かましさも、ある程度は許容されるべきではあると思います。

しかし、批評するという行為は、大概が、一人称からの目線と三人称からの目線と、二つの目線からの評価をもとになされます。自己評価視点と一般論的評価視点とをちゃんぽんして、これが我輩の思う○○、みたいな感じになるんです。そうなると、 "良い" けど "悪い" とか、またはその逆のパターンがあり得るようになるわけです。

今回の定期公演、僕は7月以来でしたので、どんなもんかとワクワクしてました。結論から言いますと、 "良かった" んです。


良い

まず、みんな歌めちゃくちゃ上達してました。あれはびっくりしました。ちょいちょい歌を聴く機会はありましたが、やっぱり定期公演でないと測れない部分はありまして、クソイベでもちゃんと歌おう!と言うのは簡単ですが、気持ちに紐付いての行動ですからね。それなりの意気込みだったりがないとなかなか。メンバーみんな上手くなってたんですが、特に鉄戸美桜さんですかね。もともとハコムスのなかでは上手い組のひとりではありますが、にしても伸びたなーと。鉄戸さんは、歌に表情つけるのが格段に良くなってまして、彼女はもともと無機質な歌声の質の持ち主なんですが、冷たく硬質な針金細工のような歌声から、透明感と温もりを感じる硝子細工のような歌声になってまして、どっちもそれぞれ別の魅力があるのはもちろんとして、しかしなんとも味わい深い良い歌い方するようになったなあ、と感心しきりでした。歌と歌声の関係性のイメージとしては、日の当たった硝子細工です。針金細工と違い、光を煌びやかに、柔らかく、豊かに広げます。思い返せば、ボイトレが始まってから一番伸びたのは鉄戸な気がしてまして、また、門前亜里ちゃんの卒業公演で、亜里ちゃんとふたりで歌ったあのときから、声により感情が乗るようになったと感じます。

あと阿部かれんさん。はっきり言って、加入時はふざけてんのか舐めてんのかどっちかだろうなと思うようなパフォーマンスしてましたが、まあさすがに半年も経つとまともになってくるもんですね。

小松もかさんも、常になんとなく平均点以上的な安定感は相変わらず健在だったのですが、その点数が65点から70点、75点と成長していってる気がしまして、小松らしくもパフォーマンスリーダーという肩書きを持つその意味を理解した次第です。

また、今回聴いた曲全部が僕にとって初披露でしたが、好きな感じの曲ばかりでして、運営の曲へのセンスは僕と相性いいんだよなあ、とかなんとか。ハコムスの秋冬は去年今年とミドルテンポのいい曲が多くて好きです。

トークも安定感がありまして、鉄戸さん中心に菅沼さんにしろ内山さんにしろ小松さんにしろ、キャラ立てもよく、退屈しませんでした。

総括して、ああ落ち着くなって感じですかね。ハコムスを感じる公演でした。


悪い

こう書くとやっぱり偉そうになってしまい、気が引けます。しかし、なんとも精度が低かったように感じたのも事実です。ちょっとしたことなんですけどね。体調管理だったり、歌詞間違えだったり、まあ僕はミス自体特に気にならないタイプなんで別にどうでもいいんですが。やる気のなさがみえてそれがミスに繋がると金返せとなりますが、ちゃんとやろうというのはちゃんと伝わってましたし。ただ、3か月振りに定期公演をみて、特に新たな発見がないというのは、ポジティブにも捉えられますが、もちろんネガティブにも捉えられます。はっきり言って新たな挑戦がないと新たな発見などなく、やってることの小手先は変わってようが、大まかにいつも通りやらせてるわけでして、ほぼ運営の企画の問題かとも思います。毎回新曲披露なんてすごい労力使うことだと思いますが、その挑戦は毎回同じ結果と成果を生むわけで、とても有意義ではあると思いますが、変化があるわけではなく、よっていつも通りの公演という印象を受けるのは自明でしょう。先ほど、精度が低いと言いましたが、ここ最近ハコムスメンバー忙し過ぎます。忙しい=仕事があるでいいことだと思いますけど、大人がある程度コントロールしてあげるべきところでしょう。ある一定以上忙しくなれば余裕がなくなり、それぞれの精度も落ちます。特に、まだ子供なんですから、毎日学校もあって、宿題もあって、友達とも遊びたいでしょうし、日常の豊かさなくして仕事の豊かさはないと思うんですがね。オタクは軽々しくそれらを犠牲にしてという言葉を好みますが、何様でしょうか。死ね、と言っておきましょう。運営がハコムスの為を考えるのは、それが自分たちのために直結しますから当然として、それがメンバーのために直結するかと言われたら、少し難しいように思います。程度の問題なのでさじ加減は間違いなく難しいですが、あれもこれも手を出せばいいというものではなく、それこそ個人の仕事があるならアイドルの仕事に多少配慮がなされるべきでしょう。あれもこれもやらせまくって忙しい毎日を過ごさせた結果、得たものが多かったという事実を言わせるのは簡単ですが、どうもそれ以上に失ったもののほうが多いように感じます。そこのバランス感覚を運営が管理せずには誰も管理できませんので、新たな発見が欲しいなら、取材に撮影に舞台に稽古に新曲振り付けにレッスンにボイトレに劇団ハコムスに定期公演に対バンにレコーディングにリリイベに、彼女らを消耗品として使うのはもったいないと思います。成長するのを間近でみれば、やらせたいことが増えるのはわかりますが、なによりも考えないといけないのは彼女らの体力や精神面でして、追い込めばそれを乗り越え成長だなんて、単細胞が喜びそうなアニメ根性を押し付けていたらすぐに限界がくるでしょう。ここぞというときの一定期間の無理があとあと大きな利益になることは間違いなくありますが、だらだらと長期間これを続けても疲弊してく一方でして、それはCDを無理に積み続けるオタク、それを売る側の運営が、誰よりも身を以て知ってることだと思います。もしそれを多少苦に感じなくなったとしても、それは感覚が麻痺したに過ぎず、負担が軽くなったわけではありませんから。ひとつ何かをやらせるなら、何かひとつを諦める。それは必ず、増えるのが仕事なら諦めるのも仕事でなければならなく、私生活と仕事のそれぞれの持つパイは一定でなければならないと思います。

余裕のなさは、ステージでかなり強くみえてくるのです。


結語

一番おおっと思ったのが、鉄戸さんが喉の調子の悪い内山さんのパートでフォローに入ったところでして、これぞ "悪くも良い" 例のひとつであり、まあそういう機転が利くようになったという点でも彼女をリーダーにしたのは英断だったんでしょうし、責任感からくる成長も感じられているのは事実です。しかし、やっぱり常に負担のことを考えないといけませんし、大人が思ってるより丁寧にケアしないと案外うわべまでしか届かなかったりするもんだと思うんです。ババアが化粧水やらにクソほど金使って結果シワ増やしてるのはなかなか滑稽ですが、やはり根底の食生活やら運動、睡眠などの生活習慣を大切にしてなんぼでしょう。

心の余裕がいつでもどこでも "良い" 結果を生みます。それは本人にとっても、周りにとっても "良い" 影響を及ぼし、結果 "良い" 評価の連鎖がおきます。心の余裕とはすなわち時間の余裕、お金の余裕でもあります。自由な時間、自由なお金が適度にあれば、人は堕落することも逼迫することもなく、楽に人間関係を全うし、私生活においても仕事においても有意義を見出せるのではないでしょうか。

週4仕事、週3お休み。こんなもんでどうでしょう。きっと、欲しい結果を誰もがそれぞれ享受できるようになると思います。